銀行などの融資審査で注意しておくべき決算書のポイント~貸借対照表編~
【融資審査のポイント】
資金調達という意味ではノンバンクという手もありますが、やはり銀行や信用金庫などの金利の低い融資を受けていきたいものです。
これまでは銀行などの審査では決算書に財務状況が重視される傾向にありました。今後は事業性評価融資が広く普及していくだろうと考えられていますが、そうはいっても決算書の意味が全くなくなるわけではありません。事業性評価融資だとしても、銀行などの審査で決算書は当然求められます。あくまで重視する部分が変わっていくというだけです。
では銀行などの審査では決算書はどういったところを見られるのでしょうか。
【貸借対照表のポイント ~資産編~】
資産の部では、実際にその資産の計上されているだけの価値があるのかどうかが重視されます。
例えば下記のようなポイントです。
- 実際には存在しない現金
⇒使途不明金などで仕訳が漏れていて、金庫を開けてみたら実際には現金がなかった。
- 回収不能な売掛金
⇒回収出来ないことが明らかな場合には資産とはみなされません。
- 不良在庫
⇒販売出来ない在庫は資産とはみなされません。
- 社長や役員など身内への貸付金
⇒返済期限が曖昧であったりそもそも契約書もなかったりすることも多く、いつ返済されるのか、またはそもそも返済はされるのかなど、返済が不確かだと判断されれば資産とみなされません。
- 仮払金
⇒仮払金は暫定的な会計処理として使われることが多い勘定科目です。決算ではしかるべき科目に振り替えておくことが理想ですが、どうしても仮払金として残ってしまうこともあります。仮払金の内容によって、例えば社長への貸付金を仮払金で処理していたりと、資産性のない仮払金の場合には資産とみなされません。
- 建物や車両、機械などの固定資産
⇒減価償却が適切になされているでしょうか。減価償却が不足している場合には適切な減価償却を行ったと仮定した金額で評価されます。
- 土地
⇒時価が大きく下落している場合には、その下がった時価で評価されます。
- ゴルフ会員権
⇒実態にあわせた評価がされます。
- 繰延資産
⇒創立費や新株発行費、開発費などが該当しますが、価値があって計上している資産というよりも、ただ繰り延べているだけのものという意味合いも強く、少額ならば問題ありませんが多額に計上されていると資産としてみなされない可能性があります。
このように貸借対照表の数字を単純に見るのではなく、実際にそれだけの価値がある資産なのか?という視点から資産が評価されます。
【貸借対照表のポイント ~負債編~】
負債の部では負債の内容が問われます。
- 支払手形
⇒支払い手形の中にジャンプ手形がないでしょうか。ジャンプ手形とは、支払期日までに支払うことが出来ない場合に、支払期日延長を目的として新しく手形を振り出しなおしたものです。ジャンプ手形があると資金繰りが適切かどうか評価が厳しくなります。
- 滞納
⇒税金や社会保険料などの滞納がないかどうか、場合によっては領収証などの提示が必要になることもあります。
- 社長からの借入
⇒社長や役員などからの借入は実質的に返済不要ととらえて、負債から除かれることもあります。
- 借入金が過大ではないか
⇒借入先や借入金額、借入時期、返済条件など、十分に返済可能かどうか評価されます。
このように負債に関しても貸借対照表の数字を単純に見るのではなく、負債の実態はどうなっているのかという視点から負債が評価されます。
【貸借対照表のポイント ~純資産編~】
さてこのようにして資産と負債の評価が完了すると、実態に即した貸借対照表が出来上がります。
この場合の資産と負債の差額が実際の財務状況を表した純資産になります。
資産・負債の中身を見ていくと、多くの場合当初の貸借対照表上の純資産よりも実際の財務状況を表した純資産の方が純資産額が小さくなる傾向にあります。
小さくなる分にはまだいいのですが、貸借対照表上では純資産があるのに、実際の財務状況を表した純資産の方では債務超過になってしまうことがあります。
債務超過とは純資産がマイナスの状態をいいます。つまり資産よりも負債が多い状態です。言い換えれば資金よりも借金の方が多い状態ですので、融資しても本当に返済が可能な状態なのか?と厳しい目で見られることになります。
実際の財務状況を表した純資産の方が重要視されますので、こうした逆転現象が起きてしまうと銀行からの評価は厳しいものになってしまいます。
長くなりましたので損益計算書の審査のポイントについては次回になります。
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