過度な節税は審査でマイナス?融資審査で注意しておくべき決算書のポイント~損益計算書編~
【融資審査のポイント】
資金調達という意味ではノンバンクという手もありますが、やはり銀行や信用金庫などの金利の低い融資を受けていきたいものです。
これまでは銀行などの審査では決算書に財務状況が重視される傾向にありました。今後は事業性評価融資が広く普及していくだろうと考えられていますが、そうはいっても決算書の意味が全くなくなるわけではありません。事業性評価融資だとしても、銀行などの審査で決算書は当然求められます。あくまで重視する部分が変わっていくというだけです。
では銀行などの審査では決算書はどういったところを見られるのでしょうか。
前回は貸借対照表の融資審査のポイントをご紹介しました。
今回は損益計算書の融資審査のポイントをご紹介します。
【損益計算書のポイント】
損益計算書では、計上されている利益が本当に存在しているのかという視点から決算書が評価されます。
例えば下記のようなポイントです。
- 売上の計上時期
⇒翌期に計上すべき売上を当期に計上してしまっていないか。翌期に計上すべき売上を当期に計上してしまった場合、原価率が異常に変動してしまうことで表面化してしまいます。計上時期がずれてしまうと正確な期間損益が出せません。売上は企業の活動の最も重要な部分といってよいので、正確に計上しましょう。また、誰に何を売っているのかなど売上の仕組みから事業内容を問われますので答えられるようにしましょう。
- 役員報酬
⇒売上や利益の規模に比べて異常な金額を報酬としていないか。
- 減価償却費
⇒適切な減価償却がなされているか。減価償却が適切ではない場合、減価償却費が過少計上されることで見た目上は利益が出ているように見えてしまいます。適切な減価償却費に直して評価されます。
- 雑収入
⇒内容が重要です。その期だけの一時的な収入の場合、審査上は除外して評価される可能性があります。特に固定資産売却益は特別利益に計上すべき科目ですが、雑収入として営業外収益に含めてしまっている場合は注意が必要です。
- 雑損失
⇒雑収入の同様に内容が重要です。その期だけの一時的な損失の場合、審査上は除外して評価される可能性があります。
- 過度な節税対策
⇒多くの中小企業経営者は節税に興味がおありだと思います。節税は払うべき税金が少なくなるため取り組まれる方は多いですが、資金調達という面ではデメリットもあります。節税を行うことで利益を圧縮し、本来の利益よりも少ない利益が計上されることになります。融資審査の面では当然、利益が多い方がプラス評価になりますので、利益がほとんど出ないような節税をしてしまうとあまり良い評価にはなりません。節税は財務面とのバランスも考えて、過度な節税は控えましょう。
このように損益計算書の数字を単純に見るのではなく、本当にそれだけの利益が存在するのか?という視点から損益計算書が評価されます。
【キャッシュ・フロー】
さて実は、上記のように損益計算書を評価し直したとしてそこで終わりではありません。
最終的に銀行が知りたいのは融資をした場合に返済能力がどれくらいあるのかという点です。ここで登場するのがキャッシュ・フローです。
キャッシュ・フローとは実際のお金の流れのことをいいます。企業では現金での直接的なやり取りよりも売掛金や買掛金などの掛け取引が一般的です。例えば売上を計上していても入金は翌月だったり、仕入を計上していても支払いは翌月だったり、実際の現金の流れと損益とはタイムラグが生じます。こうした実際のお金の流れを追ったのがキャッシュ・フローです。
たとえ利益をあげていても、手元に現金が残らないようであれば融資の返済をすることが出来ません。
そのため銀行などの審査ではこのキャッシュ・フローが重要視されます。
とはいえ実務上は審査の際に掛け取引などを細かくキャッシュ・フローに直すということはしません。簡易的に税引後の当期純利益に減価償却費を足すことでキャッシュ・フローを算定します。
なぜ減価償却費を足すのかですが、減価償却費は費用として計上されてはいますが既に支払いは過去に済んでおり、実際にはお金の支払いがないためです。
この税引後の当期純利益に減価償却費を足す簡易的なキャッシュ・フローをもとに返済能力が評価されます。
キャッシュ・フローを超える金額の融資については厳しい評価になるということです。もしもキャッシュ・フローよりも現状の年間返済額の方が多い場合には、どのように返済をしていくのかも問われることになります。
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