納めるのは所得税や法人税だけじゃない!こんなにたくさんある地方税
【地方税】
事業を行っていると納めなければならない税金が実はたくさんあることに気づきます。その全てをきちんと申告し納められているでしょうか?
企業は法人税と消費税を納める必要があることはよくご存知だと思います。これらは国税と呼ばれ、国に納める(消費税は一部地方税)ものです。これとは別に地方公共団体に納める地方税があります。国税と地方税はそれぞれ管轄が異なります。国税は財務省(国税局)、つまり税務署になるのですが、地方税は総務省の管轄になるため、税務署の管轄外となっていることに注意です。税務署に地方税のことを聞いてもあまり満足のいく回答は得られないことと思います。
今回はあまり知られていないだろう法人地方税を中心にご説明します。
地方税は大きく分けて普通税と目的税があります。が、ここはあまり詳しくご説明してもしょうがないので割愛します。
これとは別に、道府県税と市町村税があります。その名の通り県に納めるべき税金と市町村に納めるべき税金です。なお東京都のみ少し特別で、道府県税と市町村税が合体した都民税と呼ばれるものがあります。
【地方税の種類】
道府県税の主なものは下記です。
- 道府県民税
- 事業税
- 地方消費税
- 不動産取得税
- 自動車税
- ゴルフ場利用税
などなど。
このうち企業に主に関係してくる税金は道府県民税、事業税、地方消費税の三つですね。
市町村税の主なものは下記です。
- 市町村民税
- 事業所税
- 固定資産税
- 軽自動車税
などなど。
このうち企業に主に関係してくる税金は市町村民税、事業所税、固定資産税の三つですね。ただし固定資産税は基本的には納税通知に従って納めるだけですので割愛します。
つまり、企業に関係する地方税は
- 道府県民税・市町村民税の法人住民税
- 事業税
- 事業所税
- 地方消費税
の四種類となります。
これら地方税について重要なことがあります。それは地域によって税率が違うということです。地方税は地方税法で税率の上限が定められているだけで、実際の税率は各都道府県・市町村でそれぞれ条例によって定められているため異なるのです。
【法人住民税】
法人住民税には、道府県に納めるべき道府県民税と市町村に納めるべき市町村民税があります。前述の通り東京都だけはこれらを合算して都民税となっています。
法人住民税は法人税割と均等割の二種類の税金を納めることになります。
- 法人税割
法人税割は法人税額に応じて納付するものです。ここでいう法人税額とは、ざっくりでは税額控除前の法人税額を基準に算定します。この法人税額に税率を乗じたものが法人税割額です。
- 均等割
均等割は資本金の額や従業員数に応じて一律で課される税です。赤字でも支払わなければならず、最少でも道府県民税が2万円~、市町村民税が5万円~となっています。法人を維持するだけで必ず7万円はかかるということですね。
資本金1千万円以下、従業員数50人以下の場合にこの最少の金額になります。ここでいう従業員数は算定期間末日現在の人数で、給与を支払っている従業員全員が対象です。
【事業税】
事業税にも法人事業税と個人事業税がありますが、個人事業税は納税通知に従って納めるだけですので割愛します。
法人事業税は収入割、所得割、付加価値割と資本割の四種類の税金を納めることになります。
- 収入割
収入割はごく一部の業種しか適用されませんのであまり気にする必要はありません。対象企業は電気・ガス供給業や保険業です。ただ、最近みかけるようになった太陽光の売電を行っている場合には、その規模によっては該当してくる可能性がありますので注意が必要です。該当した場合、該当事業に係る損益計算書を分離して作成する必要があります。
- 所得割
基本的には法人住民税の法人税割に近いものです。法人税額に各種調整を加えたものに税率を乗じることで算定します。
- 付加価値割、資本割
これら二つをあわせて外形標準課税と呼びます。資本金等の金額が一億円を超える場合に納める必要があるものなので、中小企業ではあまり関係がないものです。なのでここでは軽く触れるに留めます。
付加価値割は報酬給与額などに応じて課税されるものです。注意点としては、報酬給与額を下げると逆に税額が上がる場合がある点です。
資本割は資本金等の額一部調整を加え、税率を乗じて算定します。
【分割基準】
複数の道府県や市町村にそれぞれ事業所等を構えていた場合、どこに納付するべきなのでしょうか?
本店所在地・・・ではありません。
正解は、該当する道府県や市町村にそれぞれ分割して納めることになります。国税は国相手なので窓口が一本でわかりやすのですが、地方税は道府県や市町村をまたぐとそれぞれ納付が必要なため少々手間がかかります。
この分割をする基準を分割基準といいます。複雑なため詳細は割愛しますが、一般の事業会社の場合、納税額の半分を事業所の数で、残りの半分を従業者の数で按分してそれぞれの自治体に納付するイメージになります。
その他、製造業でしたら分割基準は従業者数のみとなりますし、倉庫業・ガス供給業は固定資産の価額によって分割するなど、業種によって分割基準が異なります。
注意点としては、従業者数の算定方法が法人住民税の均等割と異なる点です。原則としては期末日の従業者数なのですが、事業所の新設・廃止や従業者数に著しい変動がある場合には月割計算が必要になりますので、各月の従業者数を記録に残しておく必要があります。
【事業所税】
ごく一部の都市でのみ事業所税が課されます。
- 人口50万人以上の市
- その他定められた市
が対象で、例えば埼玉県では川越市、川口市、さいたま市、所沢市、越谷市の5か所で、東京都では23区と武蔵野市、三鷹市、八王子市、町田市です。
該当地域に事業所がある場合に納める必要があります。ただし、一定以下の規模の事業所では納付や申告が不要になります。注意するべきなのは納付不要のラインと申告不要のラインが異なることです。
事業所税には資産割と従業者割の2種類があります。
- 資産割
事業所の床面積に応じて課税されます。床面積が1,000㎡以下の場合には免税です。しかし800㎡超の場合には免税ですが申告は必要になります。
- 従業者割
従業者給与総額に応じて課税されます。従業者数が100人以下の場合には免税です。しかし80人超の場合には免税ですが申告は必要になります。
【地方消費税】
消費税率8%の現在では、6.3%が国税、1.7%が地方消費税となっています。消費税申告の際にあわせて申告してしまうため詳細は割愛します。
【まとめ】
国税と地方税は管轄が違うため申告の際なかなか手間がかかるものです。さらに細かい点では、地方税の中でもそれぞれ微妙に計算式や用語の定義が異なっていたりして計算順序によって若干税額がズレてしまうなど困った点もあります。もう少し共通化してくれるとわかりやすいのですが・・・
とにかくまずは、どういった税金があってどこに納めなくてはならないのかを網羅する事が大切ですね。