年末調整の手順は覚えてる?一緒に準備しておくべき3つの書類とは?
【年末調整とは?】
今年も年末調整の季節が近づいてきました。
年末調整とは所得税と復興特別所得税を精算する手続です。
給与や賞与からは源泉徴収といって所得税をあらかじめ預かっておきますが、あくまでこれは暫定的な金額を徴収しているだけです。
一年間に給与や賞与から暫定的に源泉徴収した所得税及び復興特別所得税の合計額と、年度末に確定額から計算しなおした実際に納めるべき所得税及び復興特別所得税の合計額は通常一致しません。
これを精算するための手続が年末調整なのです。
従業員等から源泉徴収で多く預かり過ぎていたら返還しますし、逆に納付額に足りていなければ追加で徴収することになります。
【年末調整の手順】
年末調整は以下の手順で従業員ごとに行います。
- 1月1日から12月31日までの間に支払うべきことが確定した給与の合計
- 給与の合計額から給与所得控除を差し引く
- さらに扶養控除などの所得控除を差し引く
- 1,000円未満を切り捨て、所得税率を当てはめて税額を算定する
- 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)があれば税額から差し引く
- 残った税額に102.1%を乗じた金額が所得税及び復興特別所得税となる(100円未満切り捨て)
- 従業員に還付するor足りなければ追加で徴収する
- 納付する
このような流れで行うことになります。
年末調整の対象となるのは給与所得者の扶養控除等申告書を年末調整を行う日までに提出している従業員等です。
基本的には年末時点で勤務している全従業員に給与所得者の扶養控除等申告書を提出してもらうことになります。
【年末調整で必要な資料】
年末調整をするために必要な資料はあらかじめ準備しておく必要があります。
具体的には以下です。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の配偶者控除等申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 給与台帳
- 保険料控除証明書(保険会社から送付されたもの)
- 小規模企業共済掛金証明書
- 国民年金や国民健康保険などの社会保険料を証明する書類
- 配偶者特別控除に必要な源泉徴収票
- 住宅ローン控除に必要な書類
- 対象年度に転職した場合には前職の源泉徴収票
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は対象年度分だけでなく翌年度分もあわせてもらっておきましょう。翌年度の給与計算で使用します。
【マイナンバー】
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書にはマイナンバーの記載が必要です。
そしてマイナンバーの提供を受ける場合には番号確認と身元確認をそれぞれ行う必要があります。
番号確認とは、正しい番号であることの確認です。通知カードや住民票などによって行うことが出来ます。
身元確認とは、番号の正しい持ち主であることの確認です。運転免許証などの写真付き身分証明書によって行うことが出来ます。
そして個人番号カードがあればそれ一つで番号確認と身元確認の両方を行うことが出来ます。
なお控除対象配偶者や扶養親族の番号確認と身元確認は提出者が行えばよいことになっているため、事業主側が直接本人確認をする必要はありません。
【年末調整で関係する所得控除と税額控除】
年末調整の手順でもお伝えしました、年末調整で関係してくる所得控除と税額控除を以下にまとめておきます。
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書に関係する所得控除
- 扶養控除
- 障がい者控除
- 寡婦(夫)控除
- 勤労学生控除
- 基礎控除
給与所得者の配偶者控除等申告書に関係する所得控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
給与所得者の保険料控除申告書に関係する所得控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
税額控除
- 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
このようになっています。
ここではそれぞれの控除の詳細な内容はご紹介いたしませんが、かいつまんでポイントだけご紹介します。
扶養控除
生計を一にする配偶者以外の親族などで年間の合計所得金額が38万円以下(給与所得であれば103万円以内)の場合に受けられる所得控除です。
この生計を一にするというのは必ずしも同居を要件としているわけではありません。
例えば単身赴任や親元を離れて寮に入っている学生など、生活費や学資金が払われているのであれば例えば同居していなくても生計を一にするものとして扱われます。
配偶者控除、配偶者特別控除
平成30年に改正がなされました。
給与所得者(申告者)の所得に応じて、かつ配偶者の所得に応じて段階的に控除が適用されます。
給与所得者は所得額が900万円以下、950万円以下、1,000万円以下の3段階にわかれ、1,000万円以下であることが要件となっています。
加えて、配偶者の所得も123万円以下(給与であれば年間201.6万未満)であることが要件となっています。
つまり、給与所得者(申告者)の所得が1,000万円(給与額は1,220万円)以下で配偶者の所得も123万円以下であれば、その所得に応じて38万円(老人控除は48万円)から1万円の間で控除が受けられます。
なおこの控除を受けるためには配偶者の合計所得金額の見積額を申告書に記載してもらう必要があります。
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
この控除を受けるためにはまず適用初年度に申告者が確定申告を行う必要があります。
そのうえで、住宅ローン控除適用2年目以降からは年末調整で対応することになります。
確定申告をすると、その翌年度の10月頃に「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」と「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」が申告者に送られてきます。
これを年末調整時に提出してもらうことになります。
注意点としては、この申告書と証明書は全年数分がまとめて送られてくることです。それ以降毎年提出するものになるので、紛失しないように気を付けてください。
【年末調整とあわせて作成しておく書類】
年末調整を行ったら忘れずに作成しておきたい書類が3つあります。
法定調書合計表と給与支払報告書と償却資産申告書です。
法定調書合計表
主に必要になるのは給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表です。毎年1月31日までに作成して税務署に提出が必要です。
これには以下の6つの法定調書が含まれています。
- 給与所得の源泉徴収票合計表
- 退職所得の源泉徴収票合計表
- 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書合計表
- 不動産の使用料等の支払調書合計表
- 不動産等の譲受けの対価の支払調書合計表
- 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書合計表
特によく使用するのが給与所得の源泉徴収票合計表と報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書合計表です。
給与所得の源泉徴収票合計表は給料を支払っていて年末調整をしていれば基本的に提出が必要と思っておきましょう。
なお法人の役員であれば給与等の支払額が150万円を超えるもの、従業員であれば給与等の支払額が500万円を超えるものが提出対象となります。
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書合計表は特定の報酬等について記載が必要です。特によく該当するのは弁護士や税理士等に対する報酬、作家や画家に対する原稿料や画料、講演料等です。これらの提出対象は5万円を超えるものとなっていますが、これらがある場合には注意しておきましょう。
給与支払い報告書
こちらも毎年1月31日までに市区町村に提出しなければならない書類です。
1月1日時点で在席している給与の支払を受けている者についてその前年中の給与所得の金額などを記載し提出します。
原則として受給者の1月1日時点の住所地に提出します。
注意点としては、金額によって対象範囲が限られていた給与所得の源泉徴収票合計表とは違い受給者全員が対象となることです。
必要な提出書類は以下の3つです。
- 総括表
- 給与支払報告書
- 普通徴収該当理由書兼仕切書
総括表は税務署で入手ができますし、既に提出実績があれば市区町村で作成した総括表が送られてきます。
給与支払報告書は4枚一組になっています。
1枚目及び2枚目が市区町村に提出する給与支払報告書で、3枚目が従業員に渡す源泉徴収票、4枚目が税務署提出用の源泉徴収票です。
普通徴収該当理由書兼仕切書は普通徴収に該当する場合に提出します。
償却資産申告書
土地、家屋、償却資産には固定資産税がかかります。
土地や家屋については所有者に固定資産税の通知が届きますが、償却資産については事業に使用しているものだけが固定資産税の対象となりますので、対象の償却資産について申告が必要になります。
償却資産とは構築物、機械や一部の車両、工具器具備品などです。
こちらも提出は毎年1月31日となっており、市町村(東京23区は都税事務所)に提出します。
毎年提出が原則ではあるのですが、市町村によっては特に増減がないのであれば提出は不要と言われる場合もあります。業種によっては償却資産にあまり動きのないこともありますので、提出不要であれば楽です。提出の際に聞いてみるなどしてそれとなく確認してみましょう。
なお固定資産税(償却資産税)は自治体が計算して通知してくれますので、償却資産の申告さえ済めばあとは課税通知が送られてくるのを待つだけとなります。
【まとめ】
年末調整は毎年必要な業務ですが年一回のため手順を忘れてしまいがちです。手順をきちんと確認し、漏れなくスムーズに行えるよう準備しましょう。
またあわせて年末年始には提出すべき書類が盛りだくさんですので、こちらも必要書類を把握して漏れなく申告しましょう。