相続税が課されない財産を利用して節税の準備をしよう!
【相続税の非課税財産】
財産を相続したからといって、その全てに相続税が課されるわけではありません。相続税が非課税になる財産もあるのです。主なものは以下です。
- 墓地、霊廟、仏壇、仏具など
- 相続人が受け取った生命保険や退職手当金などのうち一定の金額
- 宗教、慈善、学術等公益を目的とする事業を行う人が相続等した公益事業用財産
- 心身障害制度に基づく給付金の受給権
- 申告期限までに国などに寄付した財産
ここでは特に、多くの方が関係してきそうな青く塗った上二つについて解説します。
【墓地、霊廟、仏壇、仏具】
墓地や墓石、仏壇などは相続税が課されない財産です。
お墓は購入すると意外と値が張るもので、数百万円することもあります。これを利用するとちょっとした相続税対策になります。
亡くなったあとに相続財産を利用してお墓を購入した場合には節税効果はありませんが、生前にお墓を購入していれば相続税は課されないのです。さらに、これは実際に払った場合のみが対象になるため、生前に購入していても未払いだと相続税の課税対象になってしまいます。なので未払いのお墓関係の費用があることがわかっている場合には、生前のうちに払いきってしまうようにしましょう。もし借金をしてお墓を購入していた場合にはとんでもないことになってしまうので注意してください。
また、葬式費用も相続税を減額する効果があります。葬式費用に関係する相続税控除対象は以下の通りです。
- 通夜費用、仮葬式費用、本葬式費用
- お布施(通夜、葬儀分)
- 火葬費用
- 遺体運搬費用
- その他、通常葬儀に伴うと認められる費用
あくまで葬式に関係する費用のみのため、初七日や四十九日などの法要は対象外です。とはいえ、初七日の費用は葬式費用と混在する場合もあり、区分することが出来ない場合には実務上控除してしまっていることもあるようです。
お布施は領収書がもらえないことが多いため、実際に支払った金額や相手先、日付などをメモするなどして記録を残しておきましょう。
基本的に葬式費用は相続税から控除できるため、特に会社経営者など関係者が多数存在する場合にはある程度盛大に葬式をするのものよいでしょう。そうすることでその後の取引関係を良好に保つことにもつながります。
葬式で受け取った香典は税金がかかりません。そのまま相続人の収入になりますので、盛大に葬式を行う場合非課税収入が増えるというメリットもあります。一方で香典返戻費用は相続税から控除することはできません。
【生命保険や退職金手当】
一定の要件を満たした生命保険や退職金手当も、一定金額までは相続税から控除され非課税になります。
- 生命保険
生命保険は三つのパターンが存在します。
A:被相続人(亡くなった方)が保険料の支払者であって、受取人が相続人の場合
⇒相続税の対象となり、基本的には「500万円×法定相続人の数」が生命保険の控除限度額になります。法定相続人が3人いれば1,500万円までということです。
B:相続人が保険料の支払者であって、受取人が相続人の場合
⇒相続人が自分で支払って自分で受け取るため所得税の対象となります。この場合の控除額は50万円です。ただし一時所得のため課税される所得は1/2になります。
C:相続人が保険料の支払者であって、受取人がさらに別の相続人の場合
⇒贈与税の対象となります。贈与税の控除額は110万円までのため、上記A、Bと比べ控除額が少なく不利のため避けたいところです。
多くの場合、最も控除額がよいのはAのパターンです。次いでB、Cとなりますので、保険の契約はチェックしておきましょう。
なおAのパターンでも受取人を誰にするかで変わってきます。二次相続の可能性を考えると、受取人は配偶者より子にした方がよいでしょう。
相続対策としての生命保険のメリットは非課税枠以外にもあります。
- 保険料を支払った分だけ相続財産を圧縮できる。
- 支払った保険料以上の保険金を受け取れる。
- 相続税の納税資金とできる。
- 遺産分割のトラブルを回避できる。
保険金は現金で受け取れるため、相続財産が不動産の場合などに納税資金として利用できます。また、相続財産が自宅などの不動産のみの場合、そのままでは遺産分割が難しいのですが、生命保険を利用することで相続財産として現金を用意し相続人間の不公平感を取り除くことができます。
【退職金手当】
被相続人が死亡してから3年以内に支給が確定された退職金手当等は相続税の対象とされます。支給が確定していればよいので、未払いでも対象となります。そのため、通常は10か月で相続税の申告をする必要があるのですが、それ以降3年以内に支給が確定した場合には修正申告をする必要があります。なお3年を超えた場合には所得税の一時所得として課税されます。
ただし一定の金額が控除されます。生命保険と同様に、基本的には「500万円×法定相続人の数」が退職金手当の控除限度額になります。
一方で弔慰金は相続税や贈与税が課されないことになっています。
こちらも限度があり、
業務以外の死亡:給与の6か月分
業務上の死亡:給与の36か月分
までが非課税となります。
【まとめ】
相続税は多額になることもある分、控除額も大きなものが多数用意されています。こうした控除額や非課税資産を利用して賢く節税していきましょう。