新車より中古車を購入した方がよい理由と開業前に買った車の経費処理方法
【資産を購入してもすぐには経費に落とせない】
「今期は利益がだいぶ出そうだから、何か経費に使って節税でもしよう・・・そうだ車を買い替えよう!」
こんな考えを持ったことはありませんか?
予想以上に利益が出た場合、納税額を抑えるという意味で経費に使ってしまおうというのは悪いことではありません。
もちろん不必要なものを購入しては経費の無駄遣いですし、もともと予定されていた経費の前倒し計上も時と場合によるので慎重な検討が必要です。
ですが事業で必要なものを購入するのであれば、有効活用したうえで節税にもつながるので非常に有効な経費の使い方だと思います。
しかし先ほどの例のような、自動車など高額な資産を購入する場合には注意が必要です。
広告宣伝費や消耗品費、会議費といった単なる経費とは違い、資産の購入の場合は購入時点で全部経費に落とすことが出来ない場合があります。
それが減価償却という手続です。
中小企業で最も多いのは車ですが、他にも建物や機械装置、高額なパソコンなど購入して数年間は少なくとも使うようなものは固定資産と呼ばれ、減価償却を行います。
固定資産は前述の通り購入してからしばらくの間使用するものですので、経費に落とすのも数年間かけて按分して落とさなくてはなりません。
長い期間で少しずつ使用していくイメージですね。
車であれば数年ですが、長期間使用する建物であれば数十年に及びます。
この年数を耐用年数と呼ぶのですが、これは税法上で物件の種類ごとに細かく定められています。
なお土地は減価償却をする必要がありません。土地は半永久的に使用できるとされ、期限がなく耐用年数が無限になってしまうため減価償却を行うことが出来ません。裏を返せば土地は経費に落とすことが原則的には出来ません。
この減価償却を行うのは10万円以上の固定資産を購入した場合です。
ただし中小企業では30万円未満の固定資産であれば減価償却をせず購入時に全額経費に落とすことが出来ます。この場合年間で合計300万円が限度となるのと、償却資産税の対象にはなるという点は注意が必要です。
【減価償却の二つの方法】
減価償却には定額法と定率法という二つの方法が存在します。
- 定額法
定額法はシンプルで、耐用年数で単純に按分するだけです。
例えば耐用年数5年で300万円の資産であれば年間60万円ずつ経費に落とすことが出来るということになります(期中購入の場合は月数按分)。
- 定率法
定率法では決められた償却率を使用して減価償却を行います。
例えば耐用年数5年であれば償却率は40%なので、300万円の資産であれば初年度120万円を経費に落とすことが出来ます(期中購入の場合は月数按分)。そして次年度は120万円に40%を乗じた48万円を経費に落とすことが出来ます。
定額法も定率法も最終的に経費に入れられる総額は一緒なのですが、定率法は定額法に比べて早期に大きく経費を計上することが出来るためこちらを選択することが多いようです。
【減価償却方法の選択】
二つの減価償却方法をご紹介しましたが、これは選択適用が出来ます。
法人の場合、建物、建物附属設備、構築物、無形固定資産は定額法となっていますが、それ以外の固定資産は原則定率法、届出を出せば定額法を選択することが出来ます。
個人事業主の場合は原則定額法、届出を出せば建物、建物附属設備、構築物、無形固定資産以外の固定資産は定率法を選択することが出来ます。
【もっとお得に減価償却をしたい】
固定資産を購入した場合、長期間に渡って費用化するため、すぐに経費に落とせるわけではありません。
そうはいっても出来るだけ早く経費に落としたいですよね。
そんなときにオススメなのは中古資産の購入です。
中古資産は以下の通り耐用年数が特殊なため、かなり短くすることが出来ます。その結果早期に経費に落とせるのです。
- 既に法定耐用年数を超えている中古資産
⇒耐用年数の20%(最低2年)
例えば耐用年数5年であれば2年となります。
耐用年数2年の場合、定率法では償却率100%になります。月数按分は必要ですが、償却率100%ということは最短1年で償却出来てしまうということです。
- まだ法定耐用年数を超えていない中古資産
⇒(耐用年数ー経過年数)+経過期間×20%(最低2年)
例えば耐用年数10年で3年経過していれば、7.6年になり、端数切捨てのため7年となります。
このように耐用年数を短く出来るため、中古でもよければ中古を検討してみるのも節税の観点からはよいでしょう。
【開業前に購入していた資産】
個人事業主の場合、実は開業前に購入していた資産も経費計上出来ます。
よくあるのが車です。
開業の数年前に購入していた車がある場合、その数年使用していた部分を反映させるために減価償却に似た手続(減価の額)を経たうえで資産計上することが出来るのです。
例えば新車を200万円で3年前に購入していたとします。
まず耐用年数を1.5倍にします。通常、新車は耐用年数6年ですので、1.5倍で9年(端数切捨)となります。
この9年を用いて減価償却と同様に計算します。
この場合、減価償却の方法は旧定額法という特殊なものになります。
旧定額法は定額法と同様に単純な年数按分なのですが、10%部分を除外して計算します。
200万円×90%×0.111(÷9年と同様)=19.98万円
19.98万円×3年=59.94万円
これが減価の額です。
この減価の額を購入金額から差し引いた約140万円が資産計上額となります。
資産計上出来たらその後は通常通りに減価償却を行うことで、開業前に購入していた資産も経費に入れることが出来ます。
なお法人の場合は中古品として法人に譲渡することで開業前に購入していた資産も経費に落とすことが可能です。